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一方の阿狼は車に挟まれて身動きがとれなくなっていた。さらに頭を強打したため頭から血が流れてきていた。
(陣介・・・焔先輩・・・ごめんなさい・・・僕が無力なばかりに・・・)
阿狼の頭から血がどろりと流れ、目に入る。阿狼の視界は赤く染まった。そのときだった。
「ウッ・・・ウウウ・・」
阿狼の鼓動は徐々に早くなってゆく。そして、獣がまるで威嚇をするような声で阿狼は呻く。
そのころ、鎌鼬はまだ人質をとっていて緊張が続いていた。
「ウォーーーン!!」
突然張り詰めた空気を切り裂くような雄叫びがトンネルにこだまする。
焔に陣介、そして人質をとっている鎌鼬すらも動揺していた。
その雄叫びの直後、車が突如傾いた。何かが車を持ち上げているようだ。
「うおっ!?」
車が傾いたため、鎌鼬は転げ落ちた。
「何だよ今度はよぉ!?」
傾いた車が元に戻される。その後ろから現れたのは、
「グルルルル・・・!」
紛れも無い人狼であった。
「えっ、あいつは阿狼なのか・・・?何で月光があまり届かない場所なのに変身できたんだ・・・?」
陣介は突然の出来事に驚きを隠せない。一方の焔は何か思い詰めたような顔をしていた。
(この姿を見るのは二度目かしら・・・)
阿狼が人狼に変身したときの外見は体毛は全体的に白く、顔は白を基調に茶色い筋が通っている。しかし、今の姿は体毛は地獄の果てのように真っ黒に染まり、目は血走っている。さらに人魂のような青白い光を体に纏っている。阿狼は唸り声をあげながら鎌鼬に近づく。
「お、おい!来るのか?近づくんじゃねぇ!」
鎌鼬は人狼となった阿狼目掛けて鎌を振り下ろす。しかし、阿狼はいともたやすく鎌を素手で受け止めポキリとスナック菓子を割るような感覚で折った。
「ひぃ、化け物かこいつは!」
鎌鼬は恐怖で足がすくむ。
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