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阿狼は一時的に土蜘蛛から距離をとる。そして、菜緒に聞く。
「ねぇ、もしかして君は自分の力で三浦さんを助けだそうと思うかい?」
「うん。覚悟はできてる。」
阿狼はフッと笑う。
「よし、その覚悟に乗っとってあげるよ。焔先輩!」
阿狼の言葉に焔が振り向く。
「僕が囮になります。その間に焔先輩は蜘蛛に一撃を、その隙をついて佐山さんは三浦さんを助け出してください。」
「何バカなことを!?一般市民を巻き込むつもり?あんたもしそれでその人に何かあったらクビだけじゃ済まないわよ!」
「土蜘蛛は図体が大きいため小回りが利かないので多人数で戦うのが効果的だと金次郎さんに聞きました。お願いします、佐山さんが自ら仲間を助けようとした勇気に報いてあげたいんです!」
「どうなっても知らないわよ。」
「はい、責任は僕がとります!」
阿狼は土蜘蛛に向かって走り出す。一方の菜緒は土蜘蛛が阿狼を迎え撃とうとしている間に土蜘蛛の後ろにそっと回り込む。
「小癪なぁ!」
土蜘蛛の爪が阿狼に四方八方から襲い掛かる。
阿狼はぎりぎりでかわしているが、いかんせん人狼の姿ではないため次第に追い詰められていく。やがて、一本の足の爪が阿狼の左腕に刺さる。
「ぐっ!」
そのまま阿狼はふらついて片膝をつく。
土蜘蛛はもう一本の足の爪を阿狼目掛けて振り下ろす。しかし、そのときだった。
「はあぁぁ!てぃっ!」
ザシュッという音がする。焔が剣で土蜘蛛が振り下ろそうとした足を斬り落としたのだ。そして、土蜘蛛の頭を踏んで跳躍し、杏奈を縛っていた蜘蛛の糸を剣で切り解いた。
杏奈は糸から解放される。その杏奈を隠れていた菜緒がすかさず受け止めて逃げる。
「ぐああっ!貴様らよくも・・・」
土蜘蛛は傷口から血を流しながらも阿狼と焔に向かっていく。しかし、そのときだった。
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