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「待ちなさい。」
冷ややかな声が駐車場に響く。阿狼たちの後ろに立っていたのは小雪であった。
「阿狼君、焔ちゃんお疲れ様。ここから先は私に任せてね。」
小雪は土蜘蛛に近づく。すると土蜘蛛は少し後ずさる。
(こやつはまさか・・・雪女!まずい、わしはどうしても寒さには勝てん・・・)
「阿狼君、焔ちゃん。あなたたちは早く外に出なさい。あの女の子を連れてね。」
「しかし・・・」
阿狼がそう言いかけたとき、焔は阿狼を手で制す。
「阿狼、あんたは佐山さんを安全な場所へ誘導して。大丈夫よ。小雪警部が前線に立ったらもう私たちの出る幕じゃないわ。」
「わかりました。小雪先輩、どうかご無事で!」
「お巡りさん!杏奈ちゃんは無事でした。」
菜緒が阿狼のもとへ駆け寄る。阿狼と焔と菜緒の三人は地下駐車場の出口から外へ出た。
一方、対峙する小雪と土蜘蛛。最初に口を開いたのは土蜘蛛であった。
「貴様ら、よくもわしの獲物を。全員生かして帰さんぞ!」
土蜘蛛が叫ぶと小雪の周りに蜘蛛が集まってきた。どうやら土蜘蛛の手下らしい。その蜘蛛は見た目は普通の蜘蛛なのだが、大きさは普通の蜘蛛の一回りも二回りも大きい。
「かかれ!」
土蜘蛛のその怒号で蜘蛛たちが一斉に小雪に襲い掛かる。しかし、小雪は冷静に背後にあるスプリンクラーのコックをひねる。
スプリンクラーが動き出し、水や消火剤が蜘蛛たちに雨あられと降り注ぐ。だが、蜘蛛たちは進撃を止めなかった。
蜘蛛たちは小雪まであと数センチというところで迫る。しかし、蜘蛛たちの動きが急に止まった。
「凍りなさい!」
小雪がそういうやいなや蜘蛛たちは一匹残らず凍りついてしまった。小雪がスプリンクラーを動かしたのは蜘蛛たちに液体を被せ、そして自身の能力で凍らせるためであった。現に小雪の回りに出来た水たまりは完全に凍っている。
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