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「一網打尽にしたわね。さあ、主犯はどこに行ったのかしら?」
小雪は辺りを見回す。しかし、なぜか土蜘蛛の姿はなかった。
一方そのころ、土蜘蛛は手下の蜘蛛たちを戦わせている間に駐車場の出口から逃げようとしていた。
「雪女が出てくることは想定外であったな。さて、わしはずらからせてもらうかの。」
「待て。土蜘蛛!もう逃げられないぞ!」
土蜘蛛が出口から地上に出ると目の前には阿狼がいた。阿狼は白銀の体毛を持つ人狼の姿で満月をバックに仁王立ちしていた。
「さあ、年貢の納めどきだよ。」
「貴様、人狼であったか。まあ、雪女よりかは戦いやすい。そこを退け!」
土蜘蛛は糸でホテルにぶら下がると体を曲げて尻を阿狼に向ける。そして、針を阿狼に放つ。
針は阿狼にまともに刺さるが、
「なんだ、麻酔針ってこの程度か。」
阿狼は腹に刺さった針を何食わぬ顔で抜く。
「つ、通じないのかぁ!?」
そのときホテルの壁に張り付いている土蜘蛛の頭上に陣介が現れる。
「くらいな!旋風!」
巨大なつむじ風が土蜘蛛を吹き飛ばす。
「ぬわぁっ!?」
土蜘蛛は風に煽られて地面にズシンと落ちる。
「ガルルゥ!」
駄目押しに阿狼が土蜘蛛に突進する。そして、鋭い爪で土蜘蛛の足を一瞬で三本斬り落とす。
「ぎゃああ!」
土蜘蛛の足が体を離れて散らばる。
「土蜘蛛!あんたを『滅』処分に処するわ。」
焔が剣に手をかけ、走り出す。そして、土蜘蛛を通り過ぎざまに、
ザシュン!
土蜘蛛の首を跳ね飛ばした。ゴトリと首が地面に落ちる。
「土蜘蛛、午後11時54分、誘拐及び連続殺人の容疑で『滅』処分。」
焔が剣を鞘に収めながらつぶやいた。
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