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妖怪が人間を市街地などで捕食したり殺傷したりした場合、被害者が三人以下なら閻浮署に隣接する留置場に入れられ、被害者が四人以上なら肉体を破壊し魂を地獄へ送還する『滅』処分が下される。滅処分は人間の警察に例えると、その場で拳銃で射殺されるようなものである。
胴体から首がなくなった土蜘蛛の周りには夥しいほどの血が流れている。阿狼はその光景を見つめながら独り言のようにつぶやく。
「ここまでする必要はあったんでしょうか。」
「簡単な話よ。妖怪の領域を侵した人間は妖怪に喰われ、人間の領域を侵した妖怪は閻浮署に検挙され、最悪の場合は命を落とすのよ。」
焔は達観したように言う。
「まあ、とりあえず体を破壊した。しばらくしたら魂は地獄に堕ちるだろう。俺達は夜が明けないうちに死体の片付けをするぞ。」
陣介は携帯を取り出す。
「もしもし、鑑識さん。死体の回収お願いします・・・」
一方、土蜘蛛にさらわれた被害者である杏奈と菜緒は阿狼たちから少し離れたところで再会を喜び合っていた。
「菜緒ちゃん、助けてくれてありがとう。私、みんなに嫌われてたからこのまま一人寂しく死んじゃうのかなって思って、すごく怖かった。菜緒ちゃん、本当にありがとう。」
杏奈は涙を流しながら菜緒の胸に抱かれる。
「うん。杏奈ちゃんは一人じゃないんだよ。これからも私と一緒に頑張ろうね。」
菜緒の目にも自然に涙が浮かんでいた。
「あなたたち。怖い思いをさせてごめんなさいね。」
仕事を終えた小雪が現れる。菜緒と杏奈は小雪にそれぞれ頭を下げて礼を言った。
「いいのよ。これが私たちの義務なんだから。」
そういう小雪の顔も少し綻んでいた。
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