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署長のデスクに座っていたのは、鼻が長く、背中に立派な翼を携えた巨漢であった。
「『大天狗』署長、今回の事件の報告です。昨晩確保した悪霊は被害者の女性に生前にふられたことがあったそうです。」
「要するに、逆恨みからの犯行ってことっすよ祖父ちゃん。」
二人の報告を聞いたあと、大天狗は報告書に目を通して頷いた。
「うむ。わかった。二人ともご苦労であった。それと陣介、仕事場では『祖父さん』と呼ばずに『署長』と呼べ。」
「へーい。すいませんね、署長。」
会話からわかるとおり、陣介は大天狗の孫である。ちなみに大天狗はハーフではなく生粋の天狗である。
「署長。書類の整理が終わりました。」
ズシンズシンと何か重いものが動くような音がする。阿狼はその声と音がする方へ向く。
「あっ、金次郎さん!お疲れ様です。」
そこにいたのは、『二宮 金次郎』の石像である。本当に見た目が小学校でよく見かける像である。もちろん、この石像は喋ることも動くこともできる。
「ご苦労。話はそれだけか?」
しかし、金次郎は少しばつが悪そうな顔をする。
「署長。最近、ネットのニュースに不可解な事件が載っていましてね。」
ちなみに金次郎も立派な刑事課の警察官である。主に近年、妖怪や悪霊も悪用しだしているインターネットによるサイバー犯罪を担当する。階級は警部補。
「何でもT県Sインターの道中にある『片凪トンネル』で何台もの自動車が何者かに襲撃される事件が起きているそうなんですよ。例としては、タイヤをパンクさせられる、荷台の荷物を盗まれる、さらにはフロントガラスを叩き割られたという報告もありました。それがもしかすると・・・」
「妖怪の仕業ということか・・・。よしっ!」
大天狗は阿狼と陣介の方に向き直る。
「月影と陣介にこの事件を洗ってもらおうかのう。明日の夜に調査に向かえ。」
「わかりました!がんばります!」
「おー、やる気満々じゃねぇか。わかった俺も行ってくるよ祖父ちゃん。」
「だから署長と呼びなさい。」
大天狗はため息混じりに注意した。
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