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一人目のサラリーマン
満ちた男
田中良夫 39才
高田文具会社に勤めてはや20年が過ぎた。最近変わったことは、
右目の横にシワができたこと。
しかし、エレベーターに同乗している男の頭の不毛地帯の様を見ると自分が恵まれてることに気づかされる。
~3日前~
時刻は昼を回り1時になろうかというとこだった。食堂の横に貼り出された一枚の大きな紙にはこう書いてあった。
昇進、リストラ、移動の方々
マジックで太く強い文字で表されてた。その文字から感じるものはなにもないが、リストラと書かれた文字だけには反応してしまう。
自分は確かに20年勤めてまだ平だ。働けるだけ幸福と言い聞かせてきだがさすがに寿命が来たのか。貼り出された紙に群がる群衆の間をうまくすり抜けて見える位置まで動いた。
昇進する方々
田中良夫 係長に昇進
リストラという事だけが心に突き刺さり画用紙もふとリストラメンバーの書かれた方へと目が注がれる。が、その視界を邪魔したのは
昇進メンバーに書かれた自分の名前だった。その場で右手を小さく握りよしっとこれまた小さな声で呟いた。
やはり20年間リストラが出なくて良かった。群衆から抜け、食堂へ
向かった。その顔は笑みをこぼしていた。
いつもはAランチのところを今日だけはSランチに変えた。気持ちの変化が行動になって現れていた。
Sランチを受け取り空席へ向かった。
「あ、田中先輩いや田中係長!」
座った空席の向かい側には20代の
まだシミ一つとしてない顔立ちをした部下がいた。
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