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敬語になったラースにニーナがおかしそうに笑うが、すでにいっぱいいっぱいのラースは気付いていない。
「あ、え、ニーナ、は、どうしたんですか、お母さんや、家族のかたは、」
「おかあさん・・・」
何かを思い出したのか、ニーナの目から大粒の涙がぼろぼろと溢れ出した。
ラースは焦っていた。これ以上ないくらいに焦っていた。
(どうしようどうしようどうしようどうしようどうしようこれって僕が泣かせちゃったんだよなちょっと本当にどうしたらいいんだろう)
どこか触れてはいけない所に触れてしまったのだろうか。そのせいでこの少女を傷つけてしまったのだろうか。
「あ、あの、泣き止んでください」
もちろん、そんな事で泣き止む訳がない。そろそろ周りの視線が痛くなってきた。
「うあ、すみませんお願いします泣き止んでください!ど、どうしよう、え、えと、あの、せめてなんで泣いちゃったのかだけでも、お、教えて下さい」
ニーナはしゃくり上げながら、ラースの服を掴んだ。
「!」
「に、にーなね、あのね、まいごに、なっちゃ、たの、」
「迷子?」
どうやら、傷つけてしまった訳ではないらしい。ラースは安心のため息をついた。
「それなら、僕が一緒にお母さんを捜してあげます」
ラースの言葉にニーナは泣き止んで満開の笑顔を見せた。
「ありがとうおねぇちゃん!えっと、」
「ラースです。それと、」
「僕はお兄ちゃんです」
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