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おねぇちゃんがおにぃちゃんだという事を知ったニーナはぱちくりと瞬きして、まじまじとラースを見つめ直した。
「ほんとにおにぃちゃん?」
「ああ」
「ニーナ、こんなにきれいなおにぃちゃんはじめてみた!!」
きらきらと目を輝かせるニーナにラースはふわりと微笑んだ。
「ありがとう」
しばらく歩き回っていると、すぐにニーナの母親だという人物は見つかった。
「すみません・・・ありがとうございました」
「いえ、お気になさらず」
申し訳なさそうな顔ででもどこかほっとした表情で頭を下げる若い母親を見て、ニーナは母親似なんだろうなとラースはぼんやりと思った。
「ほら、ニーナもありがとうしなさい」
「うん!おにぃちゃんありがとう!」
「どういたしまして」
ラースはしゃがみこんでニーナの頭をなれない手つきでそっと撫でた。
「それじゃあ、僕はこれで」
「本当にありがとうございました」
「いえいえ」
深々と頭を下げる母親にぺこりと頭を下げて、ラースは踵を返した。
のだが。
「ニーナ?」
足元を見下ろすと、涙目のニーナが必死でしがみ付いていた。
「おにぃちゃん、かえっちゃうの?」
ニーナの質問にラ?スは困惑しながらも頷いた。
「やだやだ!かえんないで!」
「えっ!?」
「こらニーナ!お兄さん困ってるでしょ!?」
母親の制止も聞かず、ニーナはわんわんと泣き出した。
「・・・ニーナ」
「だって、ニーナ、おにぃちゃんのおよめさんになるんだもん!!」
「えぇ!?」
その言葉にラースは困ったように頭を掻いてニーナの目線に合わせるようにしゃがみ込んだ。
「ありがとう。ニーナ」
「でもね、僕には約束してる女の子がいる。うれしいけど、ごめんね」
「・・・うん」
「ありがとう」
ラースは今度こそ立ち上がって、宿へと帰って行った。
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