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ラースに隣国であり、最近臨戦状態になっているサカルへの潜入調査が命じられたのは一ヶ月後の事だった。
「いきなりこんな事お願いしちゃってごめんね」
「問題ありません」
中途半端に整頓され、少しばかり物の多い部屋からはこの部屋の主の性格の良さが滲み出ている気がした。
「僕はあなたに忠誠を誓ってます」
「うぅん・・・僕なんかに忠誠を誓わなくても良いんだよ?」
そう困ったように笑ったのはこの部屋の主であり、第一大隊の参謀であるハンスだ。
僕なんか、と言ったハンスにラースは少々不満げな表情になる。
「ご自分を卑下なさるのはやめてください」
「それはいつもの君に言いたいよ」
「・・・」
「君は少々自分を軽んじる癖があるんだから。今回は本当にサカルの中の噂を聞いてくれば良いだけだからね?」
「・・・はい」
言い返せずに眉を寄せたラースの表情を見て、ハンスはため息をついた。
「弟分に怪我されるのは誰だって嫌だろう?」
「善処します」
「それで良いよ。それじゃあ頑張ってね」
ひらひらと手を振るハンスに頭を下げ、ラースは部屋を後にした。
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