第一章

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「なんだよそれ!?大仕事じゃん!」 「そんな事ない」 「いやいや、凄いって。俺にはできねぇもん。頑張ってな」 その日の夜、いつも通りの稽古を終えて部屋に戻ったラースは事の顛末をエドワードに話した。 エドワードはそれを聞くと目をきらきらと輝かせながら応援してくれた。 ラースがこのような仕事に就くのは初めてではないが、それ相応の緊張もある。やはり、戦場に出て剣を振り回すのとは訳が違う。 「で、いつから行くんだ?」 「出来るだけ早い方が良いって言ってたから、明日」 「・・・え?」 「・・・ん?」 いやいや、いくらなんでも早すぎるんじゃないんだろうか。エドワードは頭を抱えた。 「早くね?準備は?」 「そうか?準備なら終わっている」 ラースの指差した先には彼の少ない荷物をまとめた鞄が転がっていた。 「ああ、知ってたよ。知ってた。お前はそういうやつだよ」 エドワードは苦笑して頭を掻く。 「僕が居ない間、あんまりエリザベス様の所に通いすぎないようにね」 「うっ・・・」 ラースの咎めるような視線から逃れるようにエドワードは目を逸らした。 脳裏に柔らかな金髪が揺れる。同時再生でその甘やかな鈴を転がしたような声も聞こえてきた。 ああ。会いたいなぁ。 「おい、エドワード。聞いてる?」 「え、なに?」 「だから、僕の分の書類、ちょっとで良いから手伝っとけ」 「えぇっ!?」 涙目になるエドワードにラースは呆れたような表情になる。 「色恋にうつつを抜かすのはいいが大概にしろよ。怒られても知らないからな」 「・・・はぁい」 何となく、羨ましいと思った。 なんのしがらみもなく、仕事に集中出来るラースが。 「好きなやつが近くに居ないのも羨ましいよなぁ」 「エドワード」 ラースの声がずん、と重みを増した。 「怒るぞ」 「・・・ごめん」 ラースの翡翠色の瞳が一瞬黄金色に変わった気がした。 「良いよ。そんな怒ってないし」 嘘付け。そう言ったらまた機嫌を損ねかねなかったから黙っていたが。 「ま、仕事頑張ってこいよ」 「ああ」 笑顔で見送る事にした。
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