第一章

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サカルに来るのは初めてだった。 というより、連れて行ってもらえなかったのだ。 おそらく、エドワードなどはもう少し昔に連れて行ってもらったのではないだろうか。 騎士団に入るのは血の気の多い若者だけではなく、男女問わず身寄りのない子供が拾われて来たり、自ら生きる為に入ってくる事も少なくない。 若くして役職を貰えるのは大体が後者である。 例に漏れず、ラースやエドワードも後者だ。 騎士団に幼くして入った子供達は騎士団の幼年学校で基本的な教養を一通りつけられる。 その中の一つが隣国見学である。 子供達の中で何人かが隣国に連れて行ってもらえるのだ。 『お前は連れて行かねぇ。情が移るのが目に見えている』 なぜ連れて行ってもらえないのかと当時教師役をやっていた青年に訊ねたときに返ってきた返答である。 その後いつものように図書室に閉じこもって本をヤケ読みしたのをよく覚えている。 その青年は今では第一大隊の副隊長をやっている。 (あの人が僕の事を認めてくれたという事なんだろうか) ハンスと同じくらいに尊敬してやまないあの人に認められたというのは本気でうれしい。 ラースは俯いて小さく笑った。
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