第一章 邂逅

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 銅像に興奮しすぎて傍を離れようとしない友人を何とか呼び寄せて人ごみに流されながら入学式の会場へ向かった。 (うわあ、これ全員僕と同じ新入生、なんだよね)  講堂は百人ほどの同じ制服に身を包んだ学生によってうまっていた。それでもまだまだ空席がたくさんある。取り敢えず、端っこの誰も座っていない席に腰掛ける。残念ながら初対面の人に「隣いい?」と問いかけられる勇気はなかった。 『じゃあ、私こっち!』  たくさんの人に興味津々な友人は空いていた隣の席を陣取る。どうやら目の前に広がるたくさんのきらきらした光景に目を奪われているようだ。 (僕、友達作れるのかなあ。でも、こんなにたくさん人がいるんだからきっと一人位友達になってくれるよね)  学園の第一目標は友人を作ること。皆から口すっぱくして言われたのだ。学園生活を楽しむにはまず良い友達を作ることが大切だと。どうやら自分の口下手なところは周知の事実らしく、死ぬ気で作らないとどうなるかわからないぞと脅されてしまった。 (よーし。頑張るぞ。目指せ友達作り!)  改めて気合を入れる。  既に入学式が始まる直前。ひとりうんうんと頷く彼は、しかし、友人を作りやすい入学式前という絶好のチャンスを自分からつぶしてしまっていることに気づいてなかった。
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