第一章 邂逅

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「赤い宝石が残っている方はヴェリアス寮、青い宝石が残っている方はレティウロ寮、緑の宝石が残っている方はラング寮へと入寮する権利があります」  先ほどから友人が心配そうな目で僕のほうを見てくる。それに大丈夫だよと笑顔で返して前を向いた。本当は内心気が気でないんだが。 「それとは他に新入生の皆さん全員にレオン寮へ入寮する権利が与えられています。残っている宝石の寮へ入寮するのも良し。それとは関係なくレオン寮へ入寮するも良し。皆さんの自由です」  そのことばに安心してつい頬を緩める。他の人のように寮を自分で決める権利はないがどうやらちゃんと入寮できる寮はあるらしい。4つの寮が存在するのに対し宝石が3つしかない時点で思いつくべきだった。しかし。 (もしかしてレオン寮ってどの寮もダメな生徒への救済措置、とかじゃないよね)  嫌な考えが頭に浮かぶが気にしないことにして指示通り席を移動する。端っこの方が開いていたのでそこに座った。 (よく考えたら僕4つの寮の名前すら知らなかったな。何が違うんだろう)  友人はヴェリアス寮がいいと言っていたくらいだからきっとそれぞれの寮のことについてももちろん知っているんだろう。友人に聞こうと思ったが友人は先ほどからずっと周りのことに興味津々で聞いても答えてはくれなさそうだ。諦めて自分も周りを見渡してみた。 (気のせいじゃなくてレオン寮を選ぶ人が少ない?)  他の寮の人は3人掛けの席に少なくとも2人は座っているのに対しレオン寮はそうでもない。 (落ちこぼれの集まる寮、とか言わないよねえ)  先ほどの嫌な考えは再び脳裏をよぎる。そのとき、空いている席の方から声をかけられた。 「すみません。ここ空いてます?」  声をかけたのは2人の男子学生だった。3人掛けの席全てが開いているところはないので一人でいる僕のところに声をかけてきたのだろう。 「あ、えっと」  確かに席自体は二つ空いてるのだがつい答えに窮する。ちらりと横目で隣に座る友人を見た。友人はキョトンとした顔で僕たちを見回すだけで今の状況が理解できてないらしい。お前のことだよ。  僕が答えないことに不審に思ったのか男子学生がもう一度口を開こうとしたときだった。 「おい、席取っておけと言っただろう」  またも見知らぬ男子学生が声をかけてきた。
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