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side<クレア>
(やっぱり少し怖い…)
甲板に出て感じたのは
やはり"恐怖"だった
いい人がいるのは
わかってる
この人たちが
私から大切な人を
奪ったんじゃないってことも
わかってる
けど…
「お姉ちゃん!大丈夫?」
ビクッ
(…!…キバ…)
不意にキバが抱き付いて
きたので驚いてしまった
返事をしない私を
じっと見つめていたので
頭を撫でてあげる
「…よかったぁ」
安堵したキバに
和んでいると
「お前らぁ!静かにしろ!」
船長室から出てきたジャック
あまりの船員の煩さに
怒鳴り声をあげた
その声で
まるで水を打ったかのように
シン…と静まり返った
そして
コツコツと足音をたてながら
ジャックは私の所に来た
「今日から俺らの仲間になるクレアだ!仲良くしてやってくれ!」
私は恐る恐る一歩前に出て
お辞儀をした
『おおおおお!!!!』
『女の子じゃん!!』
『かわいいな!!』
『年はいくつだい?』
私の周りに
どっと船員が集まる
(…どうしよう…怖い…)
動きたいのだが
体が強ばっているのと
この人数に囲まれて
しまっているので
動くことができない
(船長は笑ってるし…)
側にいるジャックに
助けを求めようとしたが
愉快だと言わんばかりに
笑っている
(…怖い…)
私はその場に座り込んだ
「………おい」
凛とした声が響いて
騒がしかった周りが
一瞬で静まり返った
顔を上げると
船員の間に道が出来ていて
そこにシンが立っていた
『ふ、副船長…!』
「こいつは話ができない上に、海賊を怖がってるんだ。あんまり騒ぐんじゃねぇ。こいつが怖がるだろ」
船員にそう説明すると
私の側に来て屈み
大丈夫か
と声をかけてくれた
私は頷いて
いつの間にか流れていた
涙を拭う
「……泣くな」
私は知らなかった
この光景を見て
密かに笑っている人が
いたなんて…
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