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心の中で自問したところで、手はドアノブへと伸びていた。
ドアに手をかけて引く。
ギギギ、と鳴る耳の奥を劈く鉄の錆びた音。
段々と見えてくる扉の向こうの景色。僕はそれを見るが怖くて、目を細める。
眉の間から鼻筋へと、汗が流れた。
カチ……カチ……カチ……カチ……。
耳にこびりつくような鉄の軋む音の先、ドアの向こう。
『だるまさんがころんだ』という声は、確かにここからしていた。
カチ……カチン……。
けれど、いない。
意を決して見たドアの向こうには、誰もいない廊下の景色だけが続いていた。
「気の、せいか……?」
気づけば声も止んでいる。
あまりに非現実な状況に置かれたせいで、ついに僕の脳は幻聴まで聞くようになってしまったのだろうか。
カチ……カチ……カチ……カチ……。
それでも聞こえてくる、一定の拍子を取る金属音。
ちょうど十拍で区切られたその音で、それがメトロノームの音であることに気付く。
カチ……カチ……カチ……カチ……カチ……カチン。
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