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「立てついてなんかいないわよ! ただ、こんなことになったのは、そもそもあなたが私を男子寮に連れてきたのが悪いって言っているの!」
その奥の方にある部屋から女子の喚き散らす声が聞こえてくる。
「それが立てついてるっていってるんだよ!」
ドン、と何かを殴りつける音。
「何? 殴る気? そうやって暴力で解決しようっていう短絡的な考えも本当に嫌!」
カチ……カチ……カチ……カチン。
電気もつけないままの室内は、窓から差し込む陽射しだけが唯一の光だった。
ただ、それすらもカーテンによって遮られており、室内は目を凝らさなければ歩くことさえ難しい。
カチ……カチ……。
僕はドアの隙間から逆光によって影になる男女と思われる二人の姿を見た。
彼らはテーブルを挟んで向かい合わせに座っており、男子の方は姿勢を崩した状態でテーブルに拳を乗せている。
カチ……カチ……。
その更に奥。譜面台の傍に置かれたメトロノームが左右に揺れ音を刻んでいた。
「あの……」
外の危険を知らせようとして一歩、部屋の中に入る。
部屋の暗さに慣れ始める目が部屋の状況を映し出した。
カチ……カチ……。
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