餓の章 神山兄弟

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「ほら、みなさい! この学校はおかしいのよ。幽霊屋敷なのよ!」 「うるせえな!」 「首がこんなことになったのも、呪いに違いないわ!」 「うるせえって、いってんだろ!」 女の言葉に触発され、ドカドカと足音を大きく部屋の奥へと戻っていく男。 僕は起き上がると、男の背を急いで追いかける。 カチ……カチ……。 「何よ、それで私を刺そうっていうの? いいわよ、やってみなさいよ!」 尚も男のことを挑発する女。 「言われなくてもやってやる!」 「やめてください!」 男子が振り上げる包丁を掴んで止める。 「なんなんだよ、さっきから」 「幽霊よ、幽霊の仕業よ」 錯乱しているのか、女子は訳の分からない言葉を吐き続ける。 幽霊? 彼女には僕の姿が見えていないのか? カチ……。 「お前は、うるさいっていってんだろ!」 男が腕に力を込める。 僕の押さえている手をすり抜けて、包丁は振りおろされた。 …………カチン。 「あ」 胸のあたりから腹下にかけて痛みが走る。 「あ……あ……」 刺したのだ。  
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