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「あ…………ああ…………」
僕の手をすり抜けた包丁は、そのままの勢いで僕の身体を、その皮膚をバッサリと引き裂いた。
腹部から流れる血液の温度。
熱を帯び、血が溢れ出す傷口を押さえながら、僕はその場に膝をついた。
「ああ……」
周りから一瞬にして音が遠のいていく。
耳鳴りが鼓膜の奥でキンキンと響き、額に脂汗が浮かぶ。
呼吸が浅くなり、落ち着こうと腹部に力を入れた。
ビチャリ。
血とは違う透明な粘液と共に、ピンク色の何かが出た。
薄暗い部屋でも分かるくらい薄い色素のそれ。
手の中で抱えるその温度は生暖かく、表面は体液によってぬめぬめとしていた。
綺麗な――――内蔵。
「あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ」
自分の胴体にこんなに長い物体が入っていたなんて到底思えない。
裂けた皮膚の中から、露出した僕の内蔵は、血や透明な液体と共に体外へと滑り落ちていく。
「殺してやるよ、お前なんか!」
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