堕の章 桐谷 涼太

6/73
前へ
/312ページ
次へ
顔面の毛細血管が破裂し瞬く間に赤ばんでいく肌。 鎖骨の下辺りを貫いたメスは体内に数センチほど埋まり、今度はゆっくりと下腹部へ移動していく。 「ぎいゃああああぁぁぁああああ――っ!!!!」 悲鳴と共に上半身に描かれる一筋の直線。 その中からどろっとした赤い何かが溢れ出した。 少しずつ、時間をかけて動いていく青年の両腕。 それに伴い距離を伸ばす赤黒いライン。徐々に意識が遠のき始めたのか、青年の絶叫はやがて 「ひい――ひい――」という呻き声へと変わっていった。 ――ガチャッ―― そして最後に扉の開く音を聞き、そのまま意識を失った――。  
/312ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11472人が本棚に入れています
本棚に追加