11472人が本棚に入れています
本棚に追加
「もう少し詳し……」
「ひいい っ! 見つかっちまう! あいつに、あいつに捕まっちまう!!」
そう言って岩渕は大事そうにビンを抱えると、血相を変えて走り出した。
「ちょっと待って!! まだ聞きたいことが!!」
背中に投げつけた呼び止めが裏口の向こう側へと消えていく。
一目散で体育倉庫を後にした彼の後姿は、もう何処にも見当たらなかった。
「何なんだ……一体」
父親とこの学校との関わりを知り、入学したばかりの進学校を捨てここに来た。
隔離とも思える山奥に建てられた全寮制の高等学校。
その中で日々目の当たりにする異常な風習と習慣。
皆が皆、存在するはずの無いものに怯え、不確かな存在を崇拝している。
間違いなくここには、何かが……隠されている……。
「……ん? 何だ、これは?」
視界に何かが映り込んだ。
薄暗い空間の中で置き去りにされた小さな物質。俺は乾電池ほどのそれを地面から拾い上げ見つめる。
「スイッチ……?」
単三電池を一回り大きくしたような形状で、鉄の上に塗った艶のある黒が映えている。
そして最上部には赤いボタンのようなものが存在し、それを押す為の機械であることはすぐに分かった。
最初のコメントを投稿しよう!