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それでも一之瀬は一切の動揺など見せず、足早にその場を立ち去ろうと背中を向けた……、その時。
――ゴトンッ、と重い音を鳴らし彼女のナップサックから何かが転がり落ちた。
「――!! そ、それは――!?」
どういうことだ? 一体……どういうことなんだ!?
円柱を象ったビン。
その中には見覚えのある生々しい物体が。
急いでそれを拾い上げナップサックにしまった一之瀬は、そのまま何も言わずこの場を立ち去ろうとした。
「ちょっと待てよ! 持っているじゃないか、何で知らないなんて嘘を付いたんだ!?」
「貴方には関係のないこと」
「関係ない? いいや、大ありさ。岩渕から聞いたんだ、お祈り中に振り返ったら心臓を奪われたって。一之瀬、お前から!!」
「……そう」
「そうだ、そもそもどう考えたっておかしいだろう。何だよお祈りって! 振り返ったら殺される? ダルマの呪い? 馬鹿馬鹿しい、そんなの嘘に決まっているじゃないか!」
時を失ったかのように脚が止まった。
そのままこっちに向き直したかと思うと、俯いたままダラリと黒髪を垂らし、不気味に何かを語り始めた。
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