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ダルマ様……思わず霞を見る。
彼女はフクロウのように細い眼差しで暗がりを見つめていた。
暗がりから男女を雑多に混ぜたような不協和音が聞こえた。
「ボクタチ……ワタシタチヲ……もとにもどして……コンナニイラナイ」
次の瞬間〝ボォォオ〟というあのサイレンが聞こえた。コイツの声だったのか……。
「ユルシテェ! ユルチテェ!」
「いッ!?」
暗がりから、石川真利江が四つん這いで飛び出してきた。ゴキブリのような勢いで。
そして彼女の手が、俺の足首を掴んだ。はずみで、俺はその場に倒れ込んだ。
同時に、彼女の長い爪が剥がれ、床をパチンパチンと鳴らした。
「や、やめッ! ゥッあ!」
石川真利江の唇が、俺の脚をヂュッヂュッと吸う。
「聞いてジュンくん! あたしは学お兄ちゃんの意思を引き継ぎ、ダルマ様を捜した! 何度もこの学校に赴き、学お兄ちゃんが残した手がかりを探った!」
石川真利江の力は信じられないほど強く、どんなに力を入れても俺の脚は微動だにしなかった。
「うあッ、うあああ! 離せ! 離せよォッ!」
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