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「今で言う水銀」
「何で、水銀が……」
「この地域の山には、水銀の原材料になる鉱石が多く含まれていた。当時の場合は、小規模の火山噴火が原因で水銀が発生したんだと思う」
霞の声が、堂内に木霊した。
「多くの子は産まれることができず。そして産まれることができても不吉な子として虐げられ、山に捨てられた。
ねえ、〝どうしてダルマ様に振り向いてはいけない〟と思う?」
「あ、遊びだからだろ……わかんねえよ、そんなの」
「違うの……母親がね、不吉な子を山に捨てたの。子は泣きじゃくり、母を求めた。けど、うまく進むこともできず、転んだ。それでも、母親は振り向いてはいけなかった。情を捨て、母は心を鬼にした……」
だから、ダルマさんが転んでも、振り向いてはいけなかった……。
「子たちは、ただ普通に生きることを望んだ。小さな村での出来事だったけど、赤子たちの霊を慰めるためにお堂が建った……その200年後に、この校舎ができた。子の霊を慰めるために礼拝を行う。そんな習慣ができた」
不意に〝カーナリヤーガウータウヨー〟という歌声が聞こえた。
すでに石川真利江は俺から離れ、再び美藤祐の死骸を抱いて、子守唄を唄っていた。
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