魔の章 泉澤 順次

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目覚めの悪い深夜、家の1階から小さな物音が聞こえた。 「母さん?」 リビングに行くと、血だらけの母がプルプルと震え、何度も瞬きをしながら、 「ジュン、ジュン……」 と言って倒れた。 頭のなかで母を呼んだけど、実際には咳き込むほどに息を吸った。 台所に、霞が立っていた。彼女の足下には父が倒れていた。 霞はニッコリと笑った。 「ジュンクン、まだキス、してないよ? 約束したでしょ?」 彼女の手には耳掻きがあった。 「あのあと大変だったんだよ? 石川真利江も山本愛子も、今頃はあの山のどこかで暮らしている……」 俺が動けずにいると、ブッっていう音。耳掻きを、俺の耳に。 「ア、イッ」 奥まで入れて捻じる。 〝だーるーまーさーんーがーこーろーんーだー〟 ……俺は気を失った。  
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