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丸い流線型の表面にみみずの様に這う汚い文字だが、それでもこの文字は何故かしっくりと、自分の中に馴染んでいく。
書いた覚えは無いけれど、これはきっと、私の自筆だ。
もう一度、男の遺体に視線を移す。さらにもう一度、ラベルへ。
Aspiration ──憧れ。
そして、華麗。殺人鬼。
ストンと自分の中に言葉が降りて行くように、しっくりした感覚があった。
華麗な殺人鬼とは──、きっと、私だ。
自分が誰なのかは、全くわからない。
ただ、華麗な殺人鬼というだけで、それ以上は特別必要が無いような気もした。
私はただ、自筆のメッセージに従えば良い。シンプルになった脳は、淡々と、目的だけをそこに刻んだ。
──さあ、外に出て、目的を果たさないと。
私は瓶だけを手に持ち、玄関へ向かう。しかし途中で横たわる男を踏みつけて、急激に不快感に襲われた。
「ひどい臭いだわ」
この男からだろう。血液独特の臭いが発されて胸がムカムカする。
私は男の両足を引っぱり玄関まで運ぶと、ドアを開けて一旦外の通路へ引きずり出した。
──汚い。
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