1章 南へ

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ニク爺や精霊達からその事に付いて指摘が。 改めて自分の認識がズレている事に気疲れされる、ライト。 それも仕方あるまい。 正直ライトは、この世界で庶民の暮らしを経験していない。 ニク爺の保護から始まった異世界生活。 ニク爺は元公爵であり、元しは言え宮廷魔術師。 さらにゼルダム領の隠居した元領主にて王の教育係だった男だ。 そんな彼は完全に上流階級。 館もこの世界では最先端技術の粋であった。 それもその筈。 ニク爺は黒魔術の最高峰である賢者でもある。 そして付与魔術師としては第一人者。 彼の館には元々付与魔術を使用した品も。 そんな環境を更に改善し居心地の良い環境を整えたライト。 旅先でもその環境を維持しつつの移動。 つまりはだ。 庶民との暮らしから乖離した生活を送っていたとも言える。 そんな彼は、この世界の庶民がどの様な暮らしをしているのか… 知っているつもりで完全に理解していなかった様である。 だから富裕層以外の庶民も気楽に遊びに。 そんな感じでの構想に。 だがそれは日々の暮らしが豊かになり、ゆとりが生まれないと不可能。 つまり今の庶民達には不可能であろう。 そして庶民の暮らしを豊かに。 それは簡単に行える事では無い。 しかもライトの行うべき事ではなく、王などの仕事。 勝手な行動は慎まねばならないと言えよう。 「分かりました。  では、娯楽施設は諦めますね」 しょぼんとして告げる、ライト。 だが… 「いやいや、待つのじゃ。  別に取り止めぬでも良かろう。  富裕層の者ならば来るであろうしのぅ。  正直…  儂もどの様な施設が出来るのか興味があるでなぁ」 キラキラした目で。 結局は好奇心に勝てないニク爺であった。
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