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「分かった!俺、そこに行ってみるよ!ありがとう、おじさん!」
「ま、待ちなさい!人の話は最後まで……」
老人の止める言葉も空しく、キョウはもういなくなってしまった。
老人はため息を吐くと、再びピザを食べ始める。
「まあ……良いか。あそこにはプリモとエンリコがいるだろうし……私はピッツァを食べ終えてから帰るとするか」
★
「…………」
とぼとぼと元気無さそうな足取りで少女はエンポーリオを後にする。
「申し訳ありません。『D’24』はここでは取り扱っておりません」
「え?ここ百貨店でしょ?……しょうがないか、やっぱりパラッツォ・カナルの方でないと……」
「それが……実は『D’24』は少し前に販売が終了してしまいまして……」
「……え?…………えぇぇっ!?」
「楽しみにしてたのに、これじゃあ無駄足よ……」
「ザンビーニ……ザンビーニ……。……っ!」
その時だった。
少女は突然、走ってくる少年にぶつかった。
「きゃあっ!」
少女は尻餅をつく。
しかし少年は……
「ごめん!俺少し急いでるんだ……それじゃ!」
そのまま走り去っていた。
「ちょっとぉー!気を付けなさいよぉーっ!」
少女は尻餅を付きながら少年に向かって叫んだ。
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