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入った途端、ブドウの香りがキョウの嗅覚を刺激する。
建物の中は実にシンプルな構造で、木造の柱などが隠さずに向き出しとなっている。
一言で表すと、そこはまるで大きな倉庫の様だった。
中でも目を引くのが、至る所にあるたくさんのブドウが入った箱や、大きな樽の存在。
その他の道具なども見る限り、どうやらここはワイン工場のようだ。
あと、扉の上に書いてあった名前から、レストランと兼業しているのも見て取れる。
「おや、こんな早い時間帯にお客さんとは珍しい」
「!」
突然後ろから声を掛けられ、キョウは驚いて肩をびくりとした。
振り返ると、そこには白髪と白い顎髭が揉み上げの所で繋がっている老年の男性がいた。
老年でも身なりからしてとても気高い印象を受ける。
この人がザンビーニ家の人だろうか……?
それと、どことなくあのおじさんに似ているように見えるが、気のせいだろうか?
男性はキョウの顔を見ると、顎に手を当て始める。
「……少年に見えるが……君、年齢は?」
「……14です」
「14か……残念だ。もし16歳ならばワインを提供しているところだ」
「て、提供!?」
男性の言葉にキョウは目を見開いた。
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