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「少し唐突過ぎやしなかったか?」
厨房で皿を洗いながらエンリコは、カウンターで本を読んでいるプリモに思った事を述べる。
プリモはその言葉に一旦本を読むのをやめると、エンリコの方を向く。
エンリコは言葉を続けた。
「彼の事だ。この世界の事を何も知らない少年に勇者の事を話しても、頭の整理がつかなくなるだけだ。予期してない時に突然あんな事を言われたら、誰でもそうなる」
エンリコの話を聞いて、プリモは一間置いて返す。
「……そうだな、お前の言っている事は正しい。しかし彼は何が何でも知っておかなければならない……。この世界の現状を……今すぐにでも」
プリモはそう言ってカウンターから出ると、話を再開した。
「あの時完全にとまではいかないがと話したが、私は確信している。彼は間違いなく選ばれし勇者だ。雰囲気がどことなくあの子に似ていた……。……エンリコ」
「?」
名前を呼ばれてエンリコは改めてプリモを見る。
「私はこれからメアと連絡を取る。お前は今日の事をS.E.A.に報告しなさい」
「……承知した」
エンリコは微かに頷くと、丁度皿を洗い終えてその場を後にする。
あの子に似ている……。
それはプリモだけでなくエンリコも少し感じていた。
おそらくアントニオもそうだったに違いない。
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