☆アンラッキーデイの拾い物

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“旅に出ます。探さないでください” 居間にあるローテーブルに無造作に置かれた、思春期真っ盛りの悩める少年みたいな書き置き。 もっともこれを書いたのは、40を過ぎたおっさんもといあたしの父親だ。 「旅って……」 かち、かち、と、凧糸で長さを調整した紐を引いて、電気を点けながら。 はあ、とため息をつく。 だだっ広くて古めかしい、昔ながらの一軒家。 この家でひとりは、いまだに心細い。 なんて感情に蓋をして、二人暮らしがひとりになったところで然したる変化はない、と言い聞かせて。 とりあえず夕飯、と、カップ麺にお湯を注いだ。
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