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古くからある地方の港町。日が沈んだばかりの小さな交差点。荷役作業を終えた人や車でごった返す。そんな中を作業員とはどこか違う雰囲気の男が左右を確認していた。皮のジャンパーを着たその男は、道を渡る。
道ばたには、まだあどけなさの残る数人の男が、通行人をつかまえては何やら売りつけていた。
この街のギャング集団のひとつ、いけいけ隊の見習いてきな少年たちだ。あちこちの街からこの港のうわさを聞きつけ、集まってくる。このような少年や、職を求める人々は日を追うごとに増えていた。
皮ジャンの男は少年たちの横をすり抜けようとした。ひとりの少年が皮ジャンの袖をつかんだ。
「おっさん、これ買ってくれや」
なんてことのないありふれたキーホルダー。
「あん、俺に言ってんのか」
「決まってんだろうが」
革ジャンの男は少し考えて言った。
「金なら無い」
「そんなこと知るか」
「って言われても無いもんは無い」
「じゃ今から取ってこいや、家にはあるんだろが」
皮ジャンの男は一瞬呆れたような表情になったが、すぐに笑顔になり言った。
「わかったよ。30分くらいで戻ってくっから」
「逃げんなよ。おっさんの顔、バッチリ覚えたからな」
「おっさんって、まだ若いっての」
「知ったことかよ。早く行けよ」
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