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「スパイを潜り込ませてあるからな」
「なっ、なんだと。誰だ、誰なんだよ」
オヤジは並んで立っているアネとマルを黙って指差した。リーは迷わずマルに向かって歩き始めた。マルは迫ってくるリーとオヤジに、交互に目をやりながらうろたえた。
「えっ、えっ、」
「マル、てめえオヤジのスパイだったのか」
言ったと同時に放たれたリーの強烈な蹴りが、マルの身体を吹っ飛ばした。腹を押さえるマルはオヤジの言葉を聞いた。
「そいつではない。言っただろうが、マルは初めて聞く名前だと。ばかたれが」
「じ、じゃあ誰なんだよ」
その問いにアネが小さく手を上げた。
「あたしよ。たまにお父様の話し相手になってるの」
そしてオヤジに向かってつづけて言った。
「お父様もお人が悪い。ただ世間話してるだけでしょ。それをスパイだなんて」
オヤジの高笑いが響いた。リーは倒れているマルに歩み寄った。ひざを折りマルにあやまる。
「許せマル、すまん、あんなオヤジで」
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