遊々隊

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遊々隊

遊々隊のタツとリュウが、港の岸壁にある転落防止の車止めに座っていた。通行する人もまばらで、海風が強い。ふたりは双子の兄弟だったが、顔は似ていない。双子だと言っても信じてもらえない事が多かった。ただ性格はそっくりで、つるんでのケンカなら息のあったコンビネーションで威力を発揮する。 ふたりの横に、彼らを慕うドラも座った。ドラは遊々隊でもっとも若い。タツとリュウにちなんで自分のニックネームをドラゴンと決めたのだが、まだ半人前だからドラだな、とリーに言われ皆もそう呼ぶようになった。少し不満もあるが、いずれ力を認めてくれるだろう、そう思っていた。 3人の前を段ボールを積んだ軽トラックが通った。運転手は座っていた3人を見つけると車を止めた。そのまま窓から声をかけた。 「よう、タツとリュウ、それに半人前」 その声の主に視線を向けた3人。ドラが言い返した。 「半人前じゃないっすよ、ドラですよ、ドラ」 タツとリュウは座ったままで軽く頭を下げた。商店街にある青果店のおやじが、配達の途中で3人を見つけ、声をかけたのだった。 「おい」 明るい笑顔のおやじが、窓から手を出し手招きしている。タツが言った。
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