小競り合い

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皮ジャンの男は近くの古びたビルを指差した。 「お前たちの溜まり場、あのビルの1階だろ。あそこに持ってくよ」 「お前たちじゃねえ。言葉に気をつけろや」 男はやれやれという仕草を作った。 「わかったよ」 ここで捕まった者はキーホルダーを高値で買うはめになる。月に一度の恒例行事、いけいけ隊の少年たちの小遣い稼ぎだった。彼らは上納と呼んでいる。 30分後、古びたビルへ皮ジャンの男がやってきた。窓ガラスはところどころ割れ落ちている。蛍光灯の点滅する廊下を進み、部屋に足を踏み入れた。 パイプ椅子に座っていた少年が、その姿を見つけ、言った。 「おう、逃げずに来たなおっさん。まっ、逃げられはしないけどな」 「おっさんじゃないっての。それに…」 男は少年に近づきながらおどけた仕草を作った。 「家に帰ってみたけど、金なかったんだよね」 「な、なんだと。てめぇ、なめてんのか」 少年は立ち上がり、男をにらむ。そこに別の少年が割ってはいった。 「まぁまぁ、金ないんなら明日でもいいじゃねえか。その代わり…」
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