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港に隣接した建物。岸壁ギリギリに建てられたそのビルの、錆びれた非常階段は海に突きだしていた。完成を待たずして放置されたそのビルの5階は仕切りを全て取り払い、コンクリートがむき出しの広い空間になっていた。リーを含めた遊々隊の5名が笑いながら雑談していた。
複数の車の急停車する音が聞こえた。窓の外を眺めていたひとりが、室内に向かってのんびりとした声を出した。
「奴らが来たみたいですよ」
窓の近くにいたもうひとりも、ビルの入口付近に目を向けた。
「おうおう、来るわ来るわ、ざっと 20名ちょっとってトコですかね」
皆は頭であるリーを見る。リーは皆の視線を遮るように目を閉じた。微かに足音が聞こえてくる。その音が次第に大きくなってくる。
リーは目を開けると笑顔を作り、皆に言った。
「逃げるぞ、解散」
言葉と同時に皆は素早く行動に移った。天井裏に飛びうつる者、窓から垂らしたロープを掴む者。皆は遊んでいるかのように、その表情は明るい。
リーはここまで持って来ていた、少し形の変わったバイクにまたがった。すぐさまアネが後ろに飛び乗る。エンジンを始動させた時、開けっ放しのドアから男達が飛び込んできた。
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