小競り合い

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「しっかり掴まってろよ」 その言葉にアネはリーの腰に廻した手に力をこめた。入って来たいけいけ隊のメンバーが何か叫んでいたが、バイクのエンジン音にかき消され耳には届かない。 タイヤとコンクリートの擦れる音、煙、そして焦げた臭いと共に急発進した。 「ヤッホゥ」 雄叫びをあげるリーとアネは開けっ放しの裏口から飛び出した。青空は水平線まで続いていた。景色を目にしたのはほんの一瞬だった。身体が浮いた。すぐさま身体の芯が上がるような感触。バイクは海にダイブした。 激しい水しぶきを上げて、バイクとふたりは海に沈みこむ。そしてすぐに海面に浮かび上がった。リーはふたたび雄叫びを上げた。 「行くぜっ」 アクセルを全開にする。 「…」 「…」 ふたりは言葉が出なかった。バイクはタイヤを海中に沈みこませた状態で、人が歩く程度のスピードでトロトロと進み始めたのだった。アネが冷めたように言った。 「何これ」 「クソッ、あのバイク屋のおやじ、水陸両用バイク作ったとかぬかしやがって、何じゃこりゃ」
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