16人が本棚に入れています
本棚に追加
「しっかり掴まってろよ」
その言葉にアネはリーの腰に廻した手に力をこめた。入って来たいけいけ隊のメンバーが何か叫んでいたが、バイクのエンジン音にかき消され耳には届かない。
タイヤとコンクリートの擦れる音、煙、そして焦げた臭いと共に急発進した。
「ヤッホゥ」
雄叫びをあげるリーとアネは開けっ放しの裏口から飛び出した。青空は水平線まで続いていた。景色を目にしたのはほんの一瞬だった。身体が浮いた。すぐさま身体の芯が上がるような感触。バイクは海にダイブした。
激しい水しぶきを上げて、バイクとふたりは海に沈みこむ。そしてすぐに海面に浮かび上がった。リーはふたたび雄叫びを上げた。
「行くぜっ」
アクセルを全開にする。
「…」
「…」
ふたりは言葉が出なかった。バイクはタイヤを海中に沈みこませた状態で、人が歩く程度のスピードでトロトロと進み始めたのだった。アネが冷めたように言った。
「何これ」
「クソッ、あのバイク屋のおやじ、水陸両用バイク作ったとかぬかしやがって、何じゃこりゃ」
最初のコメントを投稿しよう!