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それからも1日の授業は進んでいくが、事あるごとに怜は神崎に見られているような気がしてならなかった。
見られている…?
否 どちらかと言うと観察されているようだった。
そういえばあいつは自分を見て「見つけた」と言った。
でも怜に、見覚えはない。
まあ、もともと人の顔を覚えるのは得意ではないのだが。
そしてさっきから頭の中に聞こえる、何かが砕ける音。
ふとした瞬間に音が聞こえる。
そしてその音がするたびに、自分の中から何かの力が湧き出てくるようだった。
次第にその力は大きくなり、自分の中にある力がどんどん増していく。
溢れ出る水が、器の中を満たしていくように。
異変に気付いた怜は授業を休み、屋上のフェンスにもたれていた。
「何なんだ…」
怜は無意識に挙を握りこんでいた。
強大な力に自分の意思までが持って行かれそうに感じる。
得体のしれない力に対しての恐怖。
それらを打ち消すように、さらに強く拳を握りこむ。
「紫堂君。」
バッと怜が振り向いた先にいたのは神崎だった。
「…神崎先生。」
怜の顔に警戒の色が浮かぶ。
―全く気配を感じなかった。
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