平穏の終わり

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「大丈夫ですか。」 はっとして声の方を見ると、いつの間にか神崎がすぐ近くに佇んでいた。 「ずいぶん苦しそうでしたが。」 「…もう大丈夫です。」 また力が暴れ出すかもしれないと、怜は目を逸らす。 「もう私の目を見ても大丈夫でしょう。  力はずいぶん安定しているようですから。」 「…え。」 この力が分かるのだろうか。 怜は目を瞠って神崎を見つめる。 「そのように強大な力を一瞬で制御するとは。  さすがですね。」 やはり、この男は何か知っている。 「この力を知っているんですか。」 「ええ。少なくともあなたよりは。」 「…教えてください。この力は何なんですか。」 「その力は、限られたものにしか使えない力。  霊力といいます。」 「れいりょく?」 「そう。  ただしその霊力は俗に世間で言う  幽霊を見たりできる力とかいう単純なものではありません。  この力は、悪しきものである妖魔を滅し、  人の世の均衡を守るためのもの。」 「…妖魔(ようま)?」 「妖魔のことは、何度か授業で習ったことがあるでしょう?  古典の教科書などにも載っています。」 そうだ。 古典や歴史などによく出てくるこの国に遥か昔からある有名な言い伝え。 昔あった 人間と妖魔による戦い。
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