銀の月

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その日の夜、怜は自室のベットに寝転がってじっと考えていた。 今日学校で見た光景。 全く見覚えがないはずなのに、 なぜか知っているような、懐かしいような気さえするあの光景。 そして自分の周りにいた人々。 「なんだろう。 俺はあそこを知っている気がする…」 しかし思い出そうとしても思い出せず、いつしか怜は眠りについた。 ************************************* 怜はまた夢を見ていた。 周りを見渡すと、焼け焦げた大地が広がり、たくさんの屍が倒れている。 その悲惨な光景を見つめながら、拳を強く握りこむ一人の少年がいる。 齢はそんなに怜とは離れていなさそうだ。 そんな青年の傍らにどこからか音もたてず、二人の少年が現れた。 いずれも長身で、一人は深紅の長い髪を一つに括っていて、 一人は短い藍色の髪をしていた。 「どうだった。」 少年が低い声で二人に問う。 紅い髪を持つ青年が暗い表情で告げる。 「…駄目だ。南の村に行ってみたが、もうすでに火の海だった。」 「…っ!!」 少年は悲痛な顔で強く唇をかむ。 そんな少年を二人の青年が気遣わしげに見る。 「お前は必死になってやってるんだ。そんなに自分を責めるな。」 紅い髪の青年が少年に言う。 「だが…」 「お前は神じゃない。  救えなかったのはお前のせいじゃない。  お前がいるから、まだこれだけの被害で済んでいるんだ。  今は奴らを倒すことを考えよう。」 それでもなお言い募ろうとする少年を、青い髪を持つ青年が遮る。 「…そうだな。ここで俺がふさぎこんでいても、何にもならない。」 そう言った少年の瞳には強い光に満ちていた。 「奴らを止めなければ、多くの血が流れる。」 力強い眼差し。その少年から昇る強い闘気。 「もう誰も、傷つけさせない。」 断言する少年に、二人の青年は深く頷きながら告げる。 「ああ。主と定めた、そうお前が望むのなら。」 「俺たちはお前がどんな選択をしようと、最後まで付いて行くさ。」 ――たった一人の俺たちの主。お前が望むのなら俺達は何処までも… *************************************
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