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その日の夜、怜は自室のベットに寝転がってじっと考えていた。
今日学校で見た光景。
全く見覚えがないはずなのに、
なぜか知っているような、懐かしいような気さえするあの光景。
そして自分の周りにいた人々。
「なんだろう。 俺はあそこを知っている気がする…」
しかし思い出そうとしても思い出せず、いつしか怜は眠りについた。
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怜はまた夢を見ていた。
周りを見渡すと、焼け焦げた大地が広がり、たくさんの屍が倒れている。
その悲惨な光景を見つめながら、拳を強く握りこむ一人の少年がいる。
齢はそんなに怜とは離れていなさそうだ。
そんな青年の傍らにどこからか音もたてず、二人の少年が現れた。
いずれも長身で、一人は深紅の長い髪を一つに括っていて、
一人は短い藍色の髪をしていた。
「どうだった。」
少年が低い声で二人に問う。
紅い髪を持つ青年が暗い表情で告げる。
「…駄目だ。南の村に行ってみたが、もうすでに火の海だった。」
「…っ!!」
少年は悲痛な顔で強く唇をかむ。
そんな少年を二人の青年が気遣わしげに見る。
「お前は必死になってやってるんだ。そんなに自分を責めるな。」
紅い髪の青年が少年に言う。
「だが…」
「お前は神じゃない。
救えなかったのはお前のせいじゃない。
お前がいるから、まだこれだけの被害で済んでいるんだ。
今は奴らを倒すことを考えよう。」
それでもなお言い募ろうとする少年を、青い髪を持つ青年が遮る。
「…そうだな。ここで俺がふさぎこんでいても、何にもならない。」
そう言った少年の瞳には強い光に満ちていた。
「奴らを止めなければ、多くの血が流れる。」
力強い眼差し。その少年から昇る強い闘気。
「もう誰も、傷つけさせない。」
断言する少年に、二人の青年は深く頷きながら告げる。
「ああ。主と定めた、そうお前が望むのなら。」
「俺たちはお前がどんな選択をしようと、最後まで付いて行くさ。」
――たった一人の俺たちの主。お前が望むのなら俺達は何処までも…
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