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依散は桜花にとって元同級生であり、当時は気が狂ってしまうかのように好きだった人である。
一生に一度の大恋愛……そう本気で思っていた。
……今となっては、恥ずかしい黒歴史であるのだが。
「森山くんは変わらないね」
桜花は依散には見向きもせずに晩飯のメニューに必要な食材をカゴに入れていく。
「なぁ」
依散が桜花の服の袖を掴む。
〈女々し……〉
腕を掴まずに服の袖を掴むとか、あり得ない。
そう思ってはいても、桜花は全く表情にそれを出さずにポーカーフェイスの笑顔で依散を見た。
「なに、どうしたの?」
「……」
桜花が依散を見ると、依散はものすごく言いにくそうに口をぱくぱくさせる。
だが、しばらくすると、意を決したかのように声を紡いだ。
「あのときは……ごめん」
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