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まず、何を入れたらそうなるのか教えてほしいぐらいに(訊くつもりなど毛頭ないが)見た目は紫色に近い色合いをしている。それだけでも充分禍々しいと思うのに、それだけでは飽き足らず味も同じぐらい禍々しいものだった。
一言で言ってしまえば“逆の意味で味気ない”、たしかに味付けはしっかりしているのだが、いろいろな具材たちがそれぞれに個性を出しすぎて互いにその個性を打ち消し合ってしまっているのでは、そんな風に感じるオリジナリティーあふれすぎな料理(?)だった。
その後は、結局こうなるのかと思いながらも最初から食べずにこうしておけばよかったと後悔と反省を同時にしつつ、勿体ないかもしれないが残飯処理し(しっかりと徹底した消臭処理も施しました)、お口直しにレヴィの希望でオムライスが食卓を彩る。
「それじゃあ、早速だけど訊いてもいいかな」
お互い席に着き「いただきます」と手を合わせてから、スプーンを手に取る動作とともにリュミエールは問いかけた。
「あのお2人について、ですよね」
言って一口食べるレヴィにつられるように、「うん」と返事をしながらリュミエールも一口。
そうして数回の咀嚼の後にゴクッと喉を鳴らして呑み込んでから、レヴィは言った。
「自分から話しても構わないのですが、リミルもお知り合いなのではありませんか?」
その問いに対して、リュミエールは「ううん」と首を横に振った。
「別に知り合いとは言えないわよ? サクヤって人には今日初めて会ったし、あいつのことは狼人族だってことしか知らないから」
「その割にはずいぶん親しげに見えましたが、名前もご存知ないのですか?」
「……う、うん」
その問いにはリュミエールも頷くことしかできなかった。自分は訊かれたために答えているが、狼人族の青年の名前やその他の彼に関する情報は、斯く斯く然々あったせいで訊くタイミングをすっかり逃していた。
(まあ、巡り巡って悪いのはあたしだと思うんだけどねぇ~……)
「リミル? どうかされました?」
「い、いや、過去を振り返って軽く自己嫌悪に……」
「……?」
「そ、それで? レヴィはあいつのこと知ってるみたいだけど、結局のところあいつはどこの誰なの?」
息を整えるつもりなのかそうでないのか、とにかく間を少し取るためにもう一口オムライスを口に運んでから、レヴィは答えた。
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