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「彼の名前はヒューゲル=ヒュライハント。
リミルがご存知かどうかは分かりませんが、この国では有名な伝説の竜騎士、ユルゲン=ヒュライハントのお孫さんだそうです。
そして、父親のミュゲル=ヒュライハントに続く形で、彼もまた騎士をしていたそうです」
「ごほっ!?」
とてつもなく見苦しいが、突然のトンデモ話にリュミエールは口に含んだオムライスを盛大に吹き出してしまった。
「い、今の話ってホントのこと!?」
「はい、本当のことです」
衣服に飛び散ったカスや汚れを拭き取りながら、レヴィは事実を淡々と告げる。
「自分も、以前彼に助けていただいたことがありますので。
ですが、そんなに驚く程のことなのですか?」
「お、驚くもなにも、驚くでしょ、普通は」
発言が少々おかしくなっているが、リュミエールが何よりも驚いたのは、狼人族の彼──ヒューゲルが騎士だったというその一点だ。もしかしたら、彼とは以前──鍛冶師になるよりも前──にもどこかで会っていたかもしれないのだから。
「でも、なんでまた元騎士が【竜騎士学院】なんかに来るわけ?」
「それは直接本人に訊いた方が賢明かと思われます。自分に訊ねられても明確な回答は持ち合わせていませんので」
「……それもそうよね」
……まあ、本人に訊いたところで答えてくれるかどうかも分からないんだけど。
「続けます。
ヒューゲルの好みはなんとなくでもお分かりでしょうが、常軌を逸している程に“辛いもの”が好きだそうです」
「“常軌を逸してる”って……」
【常軌を逸する】
常識から外れた行いをすること。
たしかに、普通ではあまり考えられないが、味の好みは人それぞれ、千差万別なのだから、
「それはちょっと言い過ぎなんじゃ……」
かくいう自分の行いも今回に限って言えば関係しているのだけど、とリュミエールは思ったりもする。
「リミルはあの男を庇うおつもりですか」
「いや、庇うとか庇わないとかいう問題じゃ……」
すると、レヴィはムッと拗ねた表情で愚痴をこぼし始めた。
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