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「そ、それじゃあ、あいつ……ヒューゲルのことは今ので少し分かったから、次はサクヤって人について教えてもらってもいい?」
話題を変えると、今度はどういうわけかため息を吐かれてしまった。
「どうしたのレヴィ。オムライス、そんなに口に合わなかった?」
「いえ、オムライスはおいしいです。それについて文句はありません。
そんなことはこの際どうでもよく、あの女についてはできれば話したくなかったので」
ヒューゲルのことを話す時よりも、レヴィの声のトーンはさらに数段落ちていた。それにしても“あの女”って……。
「どういうこと? 過去に何かトラブルがあったとか?」
「そういうことではありません。
それでは逆にお訊ねしますが、リミルは見ていて何も思わなかったのですか?」
「ヒューゲルに対してちょっと御執心の度合いが過ぎているような気はしたけど、それがどうかした?」
「“ちょっと”どころではありません」
これは息継ぎのためだろうか、もう一口オムライスを口に運び、次いでお茶を飲むレヴィ。そのぶっきらぼうに見える仕種から想像するに、彼女はサクヤが苦手……というよりは嫌い(?)のようだ。
「名前はサクヤ。種族は闇妖精族の“胸だけ立派な腐れビッチ”です」
「どう聞いても紹介じゃないよね、それ……」
「ですが、あの女について覚えておくのはこれぐらいで充分だと思いますので。ごちそうさまでした」
食器を片付け始めるレヴィにやや遅れて、リュミエールも急ぐあまり時折オムライスを喉に詰まらせかけながら食事を済ませた。
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