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06
リュミエールとレヴィの部屋を出てからサクヤを部屋へ送り届けるまで、ヒューゲルは再び隠密(的)行動をしていたが、人数は少ないものの往路同様に女性たちに見つかってしまい逃避行へ移行。
それでも、サクヤの存在のおかげでなんとかごまかしながら彼女たちの部屋へ辿り着けたはいいのだが、問題はその後、サクヤたちの部屋を出てからだった。
案の定とでもいうべきか、部屋を出てすぐ、露出している部分の肌に黒い斑点模様が目立つ眼鏡を掛けた女性に遭遇した。
そして、その女性もヒューゲルに気づくとなにやら砲のようなものを取り出しながら近寄ってきた。
「まったく、しつこい奴らだ……。いつまで続けるつもりなんだ……?」
などと、少なくともヒューゲルにはよく分からないことを呟くように言っていたが、ミロスの言っていた「気をつけて」とは、もしかしてこのことだったのだろうか。
しかしヒューゲルは“気をつける”素振りも見せず、手持ち砲台にも臆することなく女性に話しかけた。
「何かトラブルでも抱えているのか?」
「“トラブル”だと!?」
眼鏡の奥から睨みつける真鍮色の視線がさらに鋭さを増した。女性にしては長身で、羽織っている紺色の燕尾服をビシッと着こなしている立ち姿は、それこそ“鬼教官”のような雰囲気がどことなく窺えるが、同じくらいの伸長だからなのか(それを除いても気にはしないであろうが)ヒューゲルはどこ吹く風。砲を握っていない手で胸倉を掴まれてもそれは変わらず、女性が慌てている理由もしくは原因もまるで分かっていない様子だ。
「貴様は誰かに言われてここに来たんじゃないのか!?」
眼鏡を掛けた豹人族と思われる女性の詰問口調にも、ヒューゲルが怯むことはない。
「何のことだ? 俺はただ、知り合いに用事があっただけなんだが」
「そう……か」
落ち着いたのか、「ふぅ……」と肩の力を抜く豹人族の女性。それとともに頭の上の獣耳がぺたっと垂れた。
「話はそれだけか?」
「あぁ……すまない、無理矢理引き留めてしまったな」
と言いながら胸倉を掴む手から力は抜いてくれたが、女性はまだジャケットの胸襟の部分を握ったままだ。
そうして耳元で囁くように小声で告げる。
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