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しばらくそうして少しだけ冷たい風を浴びてから【男子学生寮】に戻ると、【寮監室】は【女子学生寮寮監室】と同様にカーテンまで閉められていた。
「そんなことをしているから時間が取れないんじゃないのか……」
そんな嘆息を漏らし、
「……まあ、それは俺が言うべきことではなかったか」
言った矢先に小さく反省するヒューゲル。それも言ったところでそばには誰もおらず、つまりはこの反省も無意味だったりする。
そんなことをしつつ自室へ戻るとリュミエールからもらった手料理を冷蔵庫にしまい、ヒューゲルはジャケットを脱いで黒のタンクトップになり──下はスラックスを穿いたまま──ベッドにうつ伏せに寝た。
「………………」
今日一日だけでリュミエール、ロディやルミリエルたちと会話などを以て関わったが、これから先もこのままでいいのだろうか。良いか悪いか、回答を多数決で決めたところで意味がない。たとえあったとしてもどうしようもないことは、自分自身も理解はしている。
続いて、ヒューゲルは仰向けになり両肩を抱いて小さく丸くなった。
震えている……? それとも何かを怖がっているのか……?
(こんな姿、あいつらには見せられないな……)
最後に大の字になると、同時に思考を切り替え、森でやり合った“謎野郎”に思いを馳せてみた。
いきなり襲いかかってきて、邪魔が入ったら潔く撤退。自分を狙っていたことは今更考えるまでもない程に明白だが、それだけに理由が分からない。それにどうも手際が素人臭い。手馴れた殺人鬼のような相手では太刀打ちできなかっただろうから命拾いしただけでもよかったのだが、それでもやはりおかしいと思う。
結果としてレヴィの助太刀で事なきを得たのだが、邪魔が入ることは考えなかったのだろうか。
それに、“謎野郎”の額にあるはずの傷が、何故ガナンにもあるのだろうか。
当然、偶然にも同じ時間の違う場所で傷を負った──という可能性もないとは言い切れないのだが、果たしてその可能性というものは如何ほどなのだろうか。
「……」
……考えても仕方のないことだった。
このままでは眠れそうもない。そう思ったヒューゲルはビクリスの調合を始めてみたが、思いの外早く済ませられてしまった。
──結局、たとえ眠れなくとも、無理やりにでも眠るしかなさそうだ。
外は、夜だ。
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