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「こ、これ、この間のお礼とお詫び!」
と言いながらもすでに限界間近だったリュミエールは、ヒューゲルと目を合わせないよう瞑って且つ下を向いて差し出したのだが、
「そんなものは必要ないと昨日も言ったはずだが。それに、昨日作ってもらった手料理でその件については片付いたとばかり思っていたんだが、俺だけか?」
残念なことに軽くあしらわれてしまった。
しかし、諦めないのがリュミエールである。
「で、でも、そんなこと言われても、あたしの気が収まらないのよ」
「………………そうか」
彼にしては珍しく不自然すぎる沈黙だった。
「今の間は何なのよ」
「何でもない。
それで、これは何だ?」
奇しくもレヴィにしたものと同じ説明をすることになった。
「………………そうか」
説明した後の彼の反応も、説明する前と同じく冷めたような興味がなさそうな、とにかくそんな淡白なものだった。
「あんた、何か隠してない?」
「何でもない」
「何でもないってことはないでしょ」
「しつこい、何でもないことだから何でもないと言った。それ以外に理由はない」
「でも「でもも何もない!!」」
場内に響いた彼にしては意外なほどの大声にリュミエールはビクッと気をつけの姿勢に硬直させてしまい、声に反応して冷たくも白くもない視線が周りから向けられた。
「……すまない」
罪の意識云々の前に、何がそうさせたのかヒューゲルは謝罪の言葉を口にした。
そうして彼は、1度は受け取った通信用のチャームを突き返すようにではなく優しくリュミエールに手渡してこう続ける。
「とにかく、これは俺には必要のないものだ。
この通り、すでに持っている」
言いながらヒューゲルが胸元から取り出したのは、首飾りは首飾りでもリュミ
エールが今朝作った2つとは趣が違っていた。
水滴を模したような水色のペンダント型ではなく緑色のひし形で、サイズはリュミエールの持つそれよりも少し大きめだった。訊けば、ヒューゲルのそれは香水加工は施されていないらしい(リュミエールはちょっとしたアクセントのような感覚で施しただけで、大抵の場合は施されないだろうが)。
まあ、連絡が取り合えるのであればそれでいいか。
まだ全然拭うどころか新たに生まれてきてしまった疑念というか違和感があることは否定しないが。
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