入寮と小さな事件と森の中

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  「ただいまより、【新入生歓迎の儀】を執り行います」  発せられた司会進行役の先生のその言葉を皮切りに、生徒たちはそれぞれ指定された場所へと移っていく。  そんな中、レヴィが小さく耳打ちしてきた。 「自分は忠告しましたよね、『あの人に贈り物をしても無駄だと思われます』と」 「それならそうと言ってくれたらよかったじゃない」 「すみません、彼に口止めされていたので。それでは」  やや早口で会話を打ち切り、レヴィは足早に自分の列と思しき場所へと去っていってしまった。  どうやら、彼女はヒューゲルの持っているペンダントについて何か知っているようだったが、なぜだろう、それを訊き出すのは法律にはない何かを犯しているような気がしてできなかった。  そして、残ったリュミエールとサクヤだったが、2人とも進行方向が同じだったようで、 「なんだ、お前たちも一緒なのか」  どういう因果か因縁か、クラスも狼人族の黒髪青年と同じだった。 「なんか、あたしたちが邪魔な存在みたいな言い方ね」 「そういうつもりはなかったんだが……」 「式の最中は私語を慎むように」  司会進行役の先生に咎められてしまい、2人は口を噤んだ。  その際、というか会話の最中、レヴィがこちらを見ているような気がしたが、それはおそらく気のせいだろう。  ふと隣を見ると、リュミエールは今度は急激に体温が上がっていくのを感じた。 「どうかしたのか?」  異変にすぐさま気づいたヒューゲルが訊ねるが、それが原因でさらに体温は上昇。 「な、なんでもないわよ」 「ジィ~………………」  ヒューゲルから目を逸らせば、お次はサクヤのジト目で睨み付ける攻撃を受ける。 「な、なによ……」 「貴女の方こそ、何か隠していませんか?」 「べ、別に隠してなんかいないわよ」  結論を言ってしまうと、式の最中ずっと、リュミエールは自分の中でいろいろと気になってしまった事柄を整理するのに必死で、壇上に上がった2人の話をほとんど無視してしまっていた(その“原因”については、もう一度ここで明記しておく必要はないかと思われる)。
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