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08
「以上を持ちまして、【新入生歓迎の儀】を終了と致します。
尚、新入生の皆さんは少しの間その場で待機していてください」
司会進行役を務める先生の言葉に、生徒たちはそれぞれ知り合い(話し相手)になったのであろう人たちと何が行われるのだろうかと少しばかり不安を募らせた。
【◯◯の儀】などと仰々しいタイトルを掲げてはいたが、実際壇上に上がったのはたったの2人だけ。
遠目からでも少し頭皮が見えてしまうぐらいに白髪が頭の上を埋め、白髭が顎の下を覆っている長老。
耳の形が魚で言うところの尾ひれのような形をしており、見えている範囲では足全体が鱗で覆われていておそらく股関節あたりから爪先までびっしりと覆われているのではないかと思われるため、あの爺さんは水妖精族なのだろう。杖も持ってはいたが別段足腰が弱いわけではなさそうで、ただのオプションのようなものなのだろう。
そんな長老然とした老教師に続いて壇上に上がったのは、決して小さいわけではなくかといって大きいわけでもない、羽のような翼のようなものを背中から生やした風妖精族の緑髪の女性だった。
【ドランヴァリエ竜騎士学院】学院長、レブルス=ファブック。
そして、当学院の“生徒会長”という役職に就いているらしい、クロウィル=ニルバース。
2人は自己紹介の後に「より良い学院生活を送ってください」だの「力を合わせて学院をより良いものにしていきましょう」などと言っていたが、文面は違えどもまるで事前に打ち合わせでもしていたかのようにほぼ同じことを繰り返して言っていただけのようにヒューゲルは感じた。
──この学院には、見えない何か、魔物よりも強大でおぞましいものが潜んでいる。
そのことをいきなり宣告、警告されたかのようだ。
まあ、現段階でそれが確信としてあるわけはなく、あくまでも個人の感想でしかない。言ってしまえば、確信でなければただの迷信、妄言妄想の類でしかない。
「青年、ちょっと来い」
などと考えていると、ホーウィルに呼び出されてしまった。
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