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「すまない、先に行っていてくれ」
「嫌です、サクヤはヒューゲル様と……」
「とりあえず行きますよ。ここにいては邪魔になってしまいますので」
人混みの流れに逆らってまでヒューゲルに近づこうとするサクヤを、いつの間に移動してきたのか近くまで来ていたレヴィが襟首を掴んで無理矢理引っ張っていき、リュミエールも「それじゃあ、またあとで」とその後に続いた。
彼女たちの後ろ姿をほんの少し見送ってから、ヒューゲルがホーウィルたちに連れられて会場の端に移動すると、風妖精族の男性は壁にもたれた。次いで懐からパイプを取り出そうとしたが、室内であることや周りの様子を鑑みてそれを断念した。
「なんだ、オッサン。何か用か」
「『何か用か』じゃないだろ。
青年、何があった」
「………………なんでもない」
「なんでもないってことはないでしょ~? あれだけ大きな声出しておいてさ~」
「……とにかく、話すつもりはない」
また同じ展開になりそうだったために嫌気が差してきたヒューゲルは、気分転換にでもなればと周りを見回すが、なにやらざわついていてそれどころではなかった。
「これから何かやるのか?」
教師陣はホーウィルやミロスたち数人を除いて全員が退場しているが、反対に“生徒会”のメンバーなのだろうか、生徒たちが入れ替わり立ち替わり机や椅子、さらには水晶玉のようなものまで運び入れている。
「入学機構に書いてなかったっけか? 【属性検査】のこと」
「いや、機構とやらには目を通していない。何なんだ、その“アンスペクション”というのは」
「たぶんおそらくだけど~、機構を読んでないのはヒューくんだけだと思うよ~?
そんなヒューくんのために説明すると~、【アンスペクション】っていうのは、毎年新入生を対象に行われるイベントみたいなものでね~、ようは個人個人の魔法属性や耐性を認識しておこうってことなんだよ~」
「たとえばあの子~」とミロスが指差す先では、1人の生徒が両手で触れた水晶のようなものが黄色の淡い光を放っている。
「あの子の場合は~、“黄色”だから“雷属性”ってことになるね~」
その他にも、“赤色”ならば“火属性”、“茶色”ならば“地属性”など、ミロスから細かなレクチャーを受けていると、ヒューゲルの名前が呼ばれた。どうやら順番が回ってきたようだ。
そこにいたのは──
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